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アートと法律

東京で弁護士をしています。舞台、ミュージカル、クラシックなどのアート、芸術が好きです。twitter: @stephan_lawyer

ゴルフシャフト事件

ゴルフシャフト事件(知財高裁平成28年12月21日判決)について書いていきます。

前回のブログでは、TRIPP TRAPP事件について取り上げたが、今回取り上げるゴルフシャフト事件も、 TRIPP TRAPP事件と同様、応用美術の著作物性が論点となった事件です。

 

1 ゴルフシャフト事件の応用美術についての判旨

まず、判例は、「著作権法は,建築(同法10条1項5号),地図,学術的な性質を有する図形(同項6号),プログラム(同項9号),データベース(同法12条の2)などの専ら実用に供されるものを著作物になり得るものとして明示的に掲げているのであるから,実用に供されているということ自体と著作物性の存否との間に直接の関連性があるとはいえない。したがって,専ら,応用美術に実用性があることゆえに応用美術を別異に取り扱うべき合理的理由は見出し難い。」と判示しました。

つまり、応用美術であるからと言って、その点をことさらに特別視しないと言いきったのです。

次に、「また,応用美術には, 様々なものがあり得,その表現態様も多様であるから,美的特性の表現のされ方も 個別具体的なものと考えられる。 そうすると,応用美術は,「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)に属する ものであるか否かが問題となる以上,著作物性を肯定するためには,それ自体が美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えなければならないとしても,高度の美的鑑 賞性の保有などの高い創作性の有無の判断基準を一律に設定することは相当とはい えず,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,著作 物として保護されるものと解すべきである。 」と判示しました。

この部分は若干分かりにくい表現ですが、結論からすれば、「美術の著作物」にあたるか否かは、著作権法2条1項1号の著作物性の要件に該当するか否かによって判断すべきということです。「高い創作性の有無の判断基準」は不要ということです。

また、「もっとも,応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とするものであるから,美的特性を備えるとともに,当該実用目的又は産業上の利用目的にか なう一定の機能を実現する必要があり,その表現については,同機能を発揮し得る 範囲内のものでなければならない。応用美術の表現については,このような制約が 課されることから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって, 応用美術は,通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が, 上記制約を課されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても, その著作権保護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。そうすると,応用美術について,美術の著作物として著作物性を肯定するために,高い創作性の有無の判断基準を設定しないからといって,他の知的財産制度の趣旨が没却さ れたり,あるいは,社会生活について過度な制約が課されたりする結果を生じると は解しがたい。また,応用美術の一部について著作物性を認めることにより,仮に,何らかの社会的な弊害が生じることがあるとすれば,それは,本来,著作権法自体の制限規定等により対処すべきものと思料される。」と判示しています。

この部分は、応用美術について高い創作性の有無の判断基準を設定しなくても社会生活に過度な制約は生じないということを言ってます。これは、応用美術が実用に供するものであるから、著作権を認める範囲を広範にすると他の創作活動に影響が出るのではないかという懸念に対するものです。

 

2 TRIPP TRAPPとの比較

ゴルフシャフト事件も、 TRIPP TRAPP事件と同様、応用美術の著作物性の判断にあたっては、高い創作性の有無の判断基準を一律に設定することは相当とはいえないと判示しました。つまり、この2つの判示は、細かな理由づけについては差異はあるものの、結論としては、同じであるといえます。